令和4年度の当初予算をはじめ、諸議案の審議に先立ち、施政方針について申し上げます。
この1年を振り返りますと、本市においては、昨年8月と9月の大雨による災害復旧事業に加え、新型コロナウイルス感染症への対応として、ワクチン接種事業をはじめとする感染対策、事業者や市民の皆様の生活や雇用を守るための経済対策などに力を注いでまいりました。
しかし、年末年始から感染者が急増し、本市にまん延防止等重点措置が適用されたことなどから、多くの方が御不安を感じられたことと思います。
こうした中にあっても、引き続き私自身が先頭に立ち、市民の皆様と一緒になって、この難局を乗り越えるとともに、これまで着実に進めてきたまちづくりの流れを止めることなく、しっかりと取り組んでまいります。
それではまず、本市の重要課題について申し上げます。
新型コロナウイルスワクチンの接種につきましては、感染拡大の防止と重症化予防のため、今後も、山口県や関係機関と連携し取り組んでまいります。
また、3回目の追加接種については、可能な限り前倒しして実施するなど、市民の生命と健康、暮らしを守り、安心して社会経済活動を行うことができる環境を整えてまいります。
あわせて、感染症の流行期に備えた医療材料の備蓄・配布を継続するとともに、医療機関に再就職する潜在看護師に支援金を給付することにより、医療人材の確保を目指します。
このほか、市議会からの御提案を受け、マスクの着用や手洗いの徹底を呼び掛けるポスターを作製し、市内の飲食店や公共施設、米軍岩国基地内などに配布しており、継続して感染対策の啓発を図ってまいります。
学校等の対応につきましては、これまで、児童生徒を含む学校関係者に複数の感染者が確認されましたが、感染対策の徹底や差別・偏見の防止など、児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう、各学校において適切に対応しました。
また、自宅待機を余儀なくされた児童生徒に対しては、タブレット端末を活用した学習の機会を確保することにも努めてまいりました。
さらに、放課後児童教室や保育園等においても、学校と同様の感染対策を講じた上で、保育を実施してまいります。
米軍岩国基地の対応につきましては、基地内の規則に基づき、感染防止対策が実施され、既に、3回目のワクチン接種も開始されています。
あわせて、日本人従業員の希望者に対しても、軍保有のワクチンによる3回目の接種が実施されているところです。
次に、総合計画に掲げています、6つの基本目標とそれを支える行政経営について、主な取組を申し上げます。
子育て支援につきましては、子育て世代包括支援センター「ほっとI」において、関係機関と連携しながら、子育てに不安のある保護者等に関わり、寄り添う環境づくりに取り組みます。
また、不育症の検査治療を希望する方に対し、費用の一部を助成することにより、安心して妊娠・出産を迎えることができる環境を整備してまいります。
さらに、ICTを活用した子育て支援策として本年1月に導入した「母子モ💛いわくに」については、更なる充実を図ってまいります。
あわせて、これまでと同様に、乳幼児医療費やこども医療費の助成、市立小・中学校の給食費無償化についても、実施してまいります。
このほか、周東町のわかば保育園の建て替えを実施しており、本年7月末に完了する予定です。
健康づくりにつきましては、コロナ禍において外出の機会や地域での活動の機会が減少している中、新しい生活様式の中でも心身の健康を保てるよう、健康づくりセミナー等の開催、地域や団体・企業と協働した健康づくり活動の支援を実施してまいります。
高齢者が安心して生活できる環境づくりにつきましては、外出支援としての高齢者活き行きサポート事業を継続して実施してまいります。
また、敬老優待乗車証をお持ちの、70歳以上の高齢者を対象に、錦川清流線をJRと同じ運賃で利用できる回数券の購入助成と、柱島航路を半額の運賃で利用できる助成を、令和4年度から新たに実施し、高齢者の社会参加を促します。
また、市内の介護サービス事業所に就職した新卒の介護福祉士に対し、引き続き給付金を支給することにより、若手人材の安定確保と質の高いサービスの提供などを目指してまいります。
このほか、「地域包括ケアシステム」の深化・推進を図るため、市民組織や関係機関などと連携・協働し、高齢者が住み慣れた地域で安心していきいきと暮らすことができるよう、取り組んでまいります。
障害者が安心して暮らせる地域づくりにつきましては、「岩国市手話言語条例」に基づき、障害者のコミュニケーションを支援する専門人材の育成を進め、障害者の社会参加の促進を図ってまいります。
また、発達障害児に対する適切な支援が身近な地域で受けられるよう、支援機関の連携強化、支援者の養成、家族への支援等に取り組んでまいります。
医療体制の堅持につきましては、山口県や医師会等の関係機関と連携を図り、医師等の確保や育成支援、地域の実情に応じた医療体制の構築等に取り組んでまいります。
また、中山間地域の中核病院の一つである市立美和病院の移転新築については、令和6年度中の開設を目指して進めてまいります。
黒磯地区の岩国医療センター跡地においては、福祉・科学学習施設を核とし、ふれあい交流施設や自然交流施設、健康増進施設を配置した「いこいと学びの交流テラス」を整備します。
令和4年度は、今年度に続き、建築物等の詳細設計と造成等の土木工事を実施することとしており、令和7年度末の完成を予定しています。
観光振興の推進につきましては、錦帯橋やその周辺を彩る桜のほか、観光施設のライトアップを行い、夜型観光の充実を図ることにより、滞在時間の延長や宿泊客の増加につなげてまいります。
また、ウィズコロナ・ポストコロナを見据え、SNS等による最新の観光情報の発信や新たな観光体験メニューの開発など、観光資源の魅力向上を図り、観光需要の回復につなげてまいります。
このほか、飛行艇ミュージアム(仮称)の整備についても、国に要望を行うとともに、官民一体となって機運の醸成に取り組んでまいります。
企業誘致の推進につきましては、市街地に近い空港の立地という本市の優位性をいかし、急速に変化する企業の働き方に対応したサテライトオフィスの誘致を進めてまいります。
また、昨年9月に開設された「防衛装備庁艦艇装備研究所岩国海洋環境試験評価サテライト」においては、全国から水中ロボットの研究者や学生が集まる「水中ロボットフェスティバル」が開催される予定であり、今後、この分野に関連する産業の誘致にも取り組み、地域経済の活性化や雇用機会の拡大を図ってまいります。
さらに、「しごと交流・創業支援施設Class Biz.」を活用し、創業期から事業が安定するまでの伴走型の創業支援や、異業種間の事業者連携などを進めてまいります。
このほか、県東部地域の産業振興の拠点施設として期待の大きい(仮称)山口県東部産業振興センターについては、昨年12月に策定された基本構想に基づき早期整備されるよう、引き続き、山口県と連携してまいります。
中心市街地の活性化につきましては、「第2期岩国市中心市街地活性化基本計画」に掲載された事業を推進しつつ、岩国駅に隣接する再開発事業において、今後も、官民の役割分担を踏まえて連携し、事業の推進を図っていくとともに、図書館機能を核としたにぎわい創出施設の整備についても、取り組んでまいります。
空港の利用促進につきましては、平成24年に開港した岩国錦帯橋空港が、本年で10周年の節目を迎えることから、これを記念する式典を開催するとともに、沖縄県や北海道への記念ツアーを実施します。
また、新しいビジネス形態や観光需要に対応した利用促進策に取り組むなど、山口県をはじめ関係機関と一層の連携を図りながら、県東部地域の空の交通拠点として、早期の利用回復に努めてまいります。
農林水産業の振興につきましては、「岩国市農林業振興基本計画」や「岩国市水産業振興基本計画」に基づき、持続可能な農林水産業の振興を図ってまいります。
その中でも、後継者や新規就業者を確保し育成するとともに、魅力的でやりがいのある産業とするため、新規就業や施設整備に対する支援などについては、継続して実施してまいります。
また、林業の活性化や森林の持つ多面的機能の維持・強化を図るため、森林の適切な経営・管理の推進や木材利用の促進などに取り組んでまいります。
このほか、岩国市漁業協同組合が実施する藤生荷さばき施設の改築が令和4年度に完了する予定であり、この施設を活用することにより、漁業活動の安全性・利便性の向上や水産業の振興を図ります。
シティプロモーションの推進につきましては、子育て世代をメインターゲットとして、本市の充実した子育て支援策や特色ある英語教育・国際交流の状況などを効果的に発信し、魅力度や認知度の向上に取り組んでまいります。
地域ブランドの推進につきましては、本市の特産品を活用し開発した統一ブランド商品「つまんでちょんまげ」のPR動画の効果もあり注目度も高まってきています。
今後も、特産品の高付加価値化やプロモーション活動を行いながら販路拡大に取り組み、ブランド力と認知度の向上を図ります。
中山間地域の振興につきましては、持続可能な地域社会の形成のため、地域おこし協力隊といった外部人材の活用などに取り組んでまいります。
また、空き家を活用したお試し住宅を新たに整備し、本市への移住を検討している方に本市の魅力を体感してもらうなど、更なる田舎暮らしの促進に取り組み、交流・関係人口の増加や移住・定住を促進してまいります。
幹線道路につきましては、渋滞緩和や災害への対応、岩国錦帯橋空港や岩国医療センターへのアクセス向上などの観点から、岩国大竹道路や藤生長野バイパスの早期完成と岩国西バイパスの早期実現に向け、官民一体となって、国や山口県に対し要望してまいります。
また、藤生長野バイパスへのアクセス道路や楠中津線についても、引き続き整備を行い、利便性の向上や生活環境の改善に取り組んでまいります。
南岩国駅周辺整備につきましては、移転整備が完了した駅舎に続き、駅前広場や駐輪場の整備を実施し、安全で快適に利用できる交通結節点となるよう、取り組んでまいります。
さらに、新岩国駅前広場につきましては、バス、タクシーエリアや、送迎用駐車場、乗降場などを再配置し、利用しやすい導線の整備などを行うため、関係機関と調整しながら検討を行ってまいります。
公共交通の再編・確保につきましては、小瀬地区と南・北河内地区における予約制乗合タクシーの実証運行の結果を踏まえ、地元住民の方の御意見もお聴きしながら、本格運行に向けて取り組んでまいります。
また、新たな地区においても実証運行を実施することとしており、高齢化の進む地域での交通手段の確保について、検討を進めてまいります。
市営住宅の整備につきましては、周東地区において、統合の中核となる沖原団地の建替工事を実施しており、令和4年度に完成する予定です。
また、市営住宅長寿命化計画の改定に伴い、今後の市営住宅の在り方についても検討してまいります。
下水道の整備につきましては、計画的に各処理区の面整備を進めるとともに、川下地区及び岩国・錦見地区の汚水幹線を延伸し、未普及地域の解消にも取り組んでまいります。
防災・減災対策につきましては、引き続き、防災行政無線の屋内受信機の整備を進めるとともに、自主防災組織の活動を支援し地域防災力の向上を図るなど、市民の安心・安全の確保に向けて取り組んでまいります。
浸水対策につきましては、排水路の改修をはじめ、ポンプ場や雨水調整池の整備を進めており、令和4年度からは、横山地区において、新たなポンプ場や排水管の再整備を進めてまいります。
また、河川における堆積土砂の撤去等により、浸水被害を軽減するとともに、急傾斜地崩壊対策の推進により、土砂災害の防止を図ってまいります。
安心・安全対策につきましては、自治会管理の防犯灯への設置費用や電気料金の助成を継続するとともに、防犯カメラの適正な運用を図り、犯罪や事故等の未然防止に努めてまいります。
米軍岩国基地の安全対策として、騒音対策につきましては、引き続き、地域の実情に即した対策を図ることができるよう取り組んでまいります。
このうち、防音工事の補助対象を事務所・店舗等にも拡大することについては、具体的な制度設計に向けた実態の調査等が行われ、着実に前進しています。
今後も、国に対して重点的に要望を行うなど、早期の実現に向けて取り組んでまいります。
また、米軍関係者による事件・事故等の防止については、実効性のある対策の実施に万全を尽くすよう、継続して国や米側に求めてまいります。
地域と一体となった教育の推進につきましては、コミュニティ・スクールや地域協育ネットの仕組みをいかし、学校、家庭、地域の連携・協働により、子供たちの豊かな学びや育ちを支援してまいります。
教育環境の充実につきましては、トイレの洋式化や特別教室への空調設備の整備、施設の老朽化に伴う改修などを進めてまいります。
また、北部地域の小・中学校の児童生徒に対して、給食を安定的に提供するため、美和西小学校に共同調理場を整備します。
さらに、小中学校におけるICT環境の整備を進め、タブレット端末の活用を推進し、児童生徒が主体的・対話的に学習を深めていくことができるよう取り組んでまいります。
このほか、通学路における危険箇所については、児童生徒の安全を確保するため、歩道整備などを進めてまいります。
文化・芸術の振興につきましては、第2期となる岩国市文化芸術振興プランを策定し、プランに基づく施策を推進するとともに、岩国市民文化会館や吉香茶室等、文化施設の活用を図り、市民が文化・芸術に気軽に触れ、多彩な活動の創造・発信ができる環境づくりを進めてまいります。
文化財の保存・活用につきましては、錦帯橋の世界文化遺産登録に向けた取組において、一般社団法人日本イコモス国内委員会と行った錦帯橋の真実性についての意見交換を踏まえ、市民や関係団体と連携し、錦帯橋の価値等について国内外に広く理解増進を図ってまいります。
また、錦帯橋が世界遺産暫定一覧表に記載されることを目指して、文化庁に対し、積極的な働き掛けを行ってまいります。
さらに、国の「重要文化的景観」に選定された、横山・岩国地区とその周辺の山々を範囲とした城下町地区については、地区内に残る歴史的建造物の保存・継承のため、整備計画を策定します。
このほか、岩国徴古館や市内に点在する歴史民俗資料館等について、令和4年度に新たな博物館の基本設計と岩国徴古館の耐震設計を実施し、これら施設の再編・再整備を進めてまいります。
生涯学習の推進につきましては、中央公民館の建て替えに向けて、令和4年度から実施設計と解体工事を行います。
スポーツ活動の推進につきましては、市民健康スポーツのつどいをはじめ、スポーツイベントへの参加促進を図るなど、生涯スポーツ社会の実現に取り組んでまいります。
また、読売ジャイアンツと広島東洋カープのファーム交流試合や、東京
2020オリンピックにおいて金メダルを獲得した、岩国工業高校出身の加納虹輝選手の名を冠したフェンシング大会など、各種イベントの開催や、スポーツ合宿の誘致促進に取り組んでまいります。
このほか、中山湖において実施されるアウトドアスポーツイベントに対し支援するなど、更なる交流人口の拡大を図ります。
県立武道館の整備につきましては、昨年、山口県において基本設計や実施設計業務に着手されたところであり、スポーツ団体等とも協力しながら、引き続き、本施設の早期完成に向けて、山口県と連携してまいります。
国際交流事業の推進につきましては、日本語や日本文化を大切にしながらも、英語教育や国際交流が充実した「英語交流のまちIwakuni」の実現を目指し、取り組んでまいります。
この取組の一つとして、英語の学び・学び直しや国際交流の拠点となる「英語交流センターPLAT ABC」について、本年3月に供用を開始します。
また、米国ワシントン州エベレット市と昭和37年8月1日に姉妹都市提携し、本年で60周年を迎えることから、両市の友好交流に取り組んでまいります。
協働のまちづくりにつきましては、市民活動団体や自治会などの多様な主体が広範囲に連携し、それぞれの長所をいかした協働事業が推進されるよう、継続して取り組んでまいります。
また、地域づくりを行う多様な担い手の育成を図り、併せて市民の主体的な取組を支援するなど、多様化する地域や社会の課題に柔軟に対応できるよう、市全体に協働の輪を広げてまいります。
男女共同参画の推進につきましては、これまで進めてきた各種取組の進捗状況などを踏まえ、令和4年度に「第4次岩国市男女共同参画基本計画」の策定を行います。
また、LGBTをはじめとした性的少数者の方への理解と配慮についても、その啓発と周知に努めてまいります。
行政経営改革の推進につきましては、市民満足度の向上と持続可能な行政経営の実現に向けて、効果的・効率的な行政経営に取り組んでまいります。
その中でも、国においては昨年9月にデジタル庁を創設し、全国的にデジタル化を推進する流れを加速しており、本市においても、新たに設置した岩国市デジタル化推進会議において、デジタル化を推進するための基本的な方針を策定します。
また、キャッシュレス決済や電子申請などのオンライン化を併せて進めることにより、各種行政手続が可能となるデジタルサービスを充実させ、更なる市民の利便性の向上を図ってまいります。
公共施設等マネジメントの推進につきましては、「公共施設の質と量の最適化」を推進するため、個別施設の具体的な対応方針の策定を進めてまいります。
財政運営につきましては、歳入では、新型コロナウイルス感染症の影響により、見通しが不透明な状況が続く一方、歳出では、高齢化の進展などによる社会保障費をはじめ、大規模事業、公共施設等の維持管理や更新、新型コロナウイルス感染症対策、行政のデジタル化の推進などに多額の財源を要することなどから、今後も厳しい財政状況が続くものと見込まれます。
こうした中においても、総合計画及び総合戦略に沿ったまちづくりの施策を着実に実施していくため、歳入の確保や歳出の合理化などに取り組み、財政基盤の強化に努めてまいります。
以上、令和4年度の重要課題や主な取組について申し上げました。
なお、令和4年度の政府予算案において、再編交付金終了後の新たな交付金制度が創設されたことは、地元のこれまでの取組が実ったものであり、米軍再編に伴い今後も継続する地元の負担と国防への貢献を、政府が真摯に受け止めていただいたものと考えています。
これにより、再編交付金を活用してこれまで実施してきた事業の継続や、新たな事業の展開が可能と考えており、貴重な財源の一つとして、令和4年度以降も、住民福祉の向上や良好な生活環境の確保に資する事業・施策に有効に活用してまいります。
また、令和4年度に第3次総合計画を策定し、これからの時代の変化に対応していくとともに、まちづくりの流れを止めることなく、更なる飛躍を目指し、市民の皆様と共に、岩国の新たな可能性に挑戦してまいります。
議員各位をはじめ市民の皆様には、御支援と御協力を賜りますようお願いを申し上げまして、私の施政方針とします。