私が市長に就任しまして3年が経過いたしました。
この間、市政各般にわたり、議員各位をはじめ市民の皆様方の御支援と御協力をいただき、岩国市が抱える諸問題について、一つ一つ着実に取り組んでまいりました。
そして、平成22年度は、その成果を目に見えるかたちでお示しすることができたと感じております。
しかしながら、取り組むべき課題はまだまだ多く、解決しなければならない諸問題が山積しております。
就任4年目を迎えるに当たり、市政運営に関する私の基本的な考えを申し上げたいと存じます。
本市は、米軍基地が所在する自治体として、これまで国の安全保障政策を尊重し、基地の安定的な運用に協力してきたところです。
また、その運用に当たっては、住民が安心して安全に暮らせる環境が確保されるよう、国及び米軍に対し、細心かつ最大限の配慮を求めてまいりました。
今回の米軍再編については、地域住民に対する安心・安全対策や地域振興策の実施を前提に、いわゆる「ロードマップ」の日米合意と現政権の下での閣議決定を踏まえ、日本の防衛のみならず、アジア太平洋地域や国際社会の平和と安定にも重要であり、その円滑かつ着実な実施の必要性は理解しているところであります。
また、岩国基地への空母艦載機等の移駐に関しては、その負担の緩和に一定の配慮がなされていることから、基本的には協力すべきものと認識しているものであります。
昨年5月、私は沖縄を訪問し、普天間基地など基地周辺住民の過重な負担を目の当たりにし、基地の負担を沖縄だけに押し付けるのではなく、各地で平準化していく必要があると感じたところです。
我が国に存在する米軍基地の約4分の3が集中している沖縄はもちろん、市街地に囲まれた厚木基地の負担が、周辺住民にとって過重なものであることを十分認識しなければなりません。
しかしながら、ここで改めて申し上げておきますが、本市は、是非にと空母艦載機を誘致したものではありません。
また、既にKC―130空中給油機の移駐を受け入れており、これ以上の負担増は認められません。
ただ、最近我が国周辺においては、尖閣諸島付近での中国漁船による海上保安庁巡視船への衝突事件、ロシア大統領の北方領土訪問、北朝鮮による韓国ヨンピョン島への砲撃事件等、様々な事件が発生しています。
こうした状況下で日本の安全保障環境を考えた場合、国の安全保障を確保するための米軍再編の意義や重要性を改めて実感するものであり、外交・防衛政策に責任を有する国の意思が最終的に決定された以上、国と自治体がお互いの立場を尊重し、協力していくべきだという考えのもとで協議を継続してまいりました。
沖縄の負担軽減や普天間基地移設の問題につきましては、昨年5月に普天間基地の移設計画などに関する日米合意があり、合意事項に関する当面の政府の取組が閣議決定されたところですが、現時点において、移設の見通しやその時期が不透明な状況となっており、今後の政府の対応や沖縄の動向などを注視してまいりたいと考えております。
沖縄と同様に基地を抱える本市は、基地の運用に当たって、住民が安心して安全に暮らせる環境が確保される、いわゆる安心・安全対策や住民福祉の向上及び地域の発展に資する施策、いわゆる地域振興策の確実な実施が必要であると考えております。
政府は、平成23年度の予算案において、本市が要望している米軍再編に係る安心・安全対策や地域振興策に関する経費として約4億5千万円を計上されたところでございます。
その中には、これまで制度上、非常にハードルの高かった、W値、いわゆるうるささ指数80W以上の区域に所在する第一種区域指定後に建設された住宅に対する防音工事に要する経費が計上されました。
75W以上の区域については、今後、騒音の状況等を踏まえて検討していきたいとの説明を国から受けておりますが、引き続き、75W以上の区域まで実施することができるよう要請してまいりたいと考えております。
また、地域振興策においては、川下地区の都市基盤整備に不可欠である楠中津線及び昭和町藤生線の整備、愛宕山用地におけるまちづくり支援事業並びにごみ処理施設整備事業の実施に向けての経費も計上されたところです。
いずれにいたしましても、基地周辺住民が安心して生活することができるための施策として、要望の強かった本事案の予算が計上されたことは、国において特段の対応がなされたものと高く評価するとともに、市民の重大な関心事である安心・安全対策について、着実に前進しているものと受け止めております。
今後も、安心・安全に関する国との協議を通じて、市民の不安を一つ一つ払しょくしていくことに最大限の努力を傾注し、その上で、地域の負担と協力に見合うだけの財政的支援を得られるよう国と交渉し、本市の長期的な発展が築かれるよう、あらゆる努力をしてまいりたいと考えております。
また、滑走路の運用時間の短縮については、昨年11月、防衛副大臣に対して「午後10時までの運用についての日米合意を得ること」を要望したところですが、市議会において全会一致で決議されていることも踏まえ、強い姿勢で要望を継続してまいりたいと考えております。
さらに、海上自衛隊の岩国残留についてですが、海上自衛隊員は、その家族とともに、岩国市民として、従来から、地元の経済や社会活動に大きく貢献しておられます。
また、大規模な災害が発生した場合における被害の拡大防止や被災者の救援活動にもその力を発揮されており、地域住民の安心・安全を守る組織として、市民から大いに期待されているところでもあります。
それに加え、最近の我が国を取り巻く安全保障の課題や不安定要因を考慮した場合、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」にも掲げられているように、平素から我が国及びその周辺において常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動による情報優越を確保するとともに、各種事態の展開に応じ迅速かつシームレスに対応する必要があり、海上自衛隊岩国航空基地における任務の重要度はますます高まるものと考えています。
そうしたことから、これまで国に対し様々な機会を捉えて要望を行っておりますが、今後も、議会をはじめ、多くの市民の皆様の声を踏まえ、各種機関や団体等とも緊密に連携し、海上自衛隊の岩国への残留について特段の措置が講じられるよう強く要望してまいりたいと考えております。
基地問題は、我が国を取り巻くその時々の周辺の情勢を反映した外交・防衛政策という高度な問題ではありますが、市民の安心・安全を守る立場として、市民の皆様の御理解の下、市議会とも連携し、粘り強く取り組んでまいります。
愛宕山地域の4分の1の区域のまちづくりにつきましては、市民の安心・安全を確保する「医療・防災拠点」の整備に向けて取り組んでいるところでございます。
その核となる岩国医療センターの移転につきましては、完成予想図が示され、市民の皆様にも具体的なイメージを持っていただけたと感じております。
岩国医療センターにおきましては、現在、開発工事を行っておられますが、本年からは、病院本体の建設、電気、機械工事に着手され、平成24年度の完成に向け順調に進めておられると伺っております。
また、灘海園につきましても、開発工事に着手されたと伺っており、市といたしましても、引き続き、県等関係機関と協力しながら、道路や雨水排水路、下水道など必要なインフラ整備に取り組んでまいります。
また、4分の3の区域につきましては、国から施設配置案が示された後、直ちにプロジェクトチームを組織し、その運動施設等の内容が既に計画しているまちづくりや周辺との調和が図られているものかどうか、市民の皆様の御要望にかなうものかどうかについての検証を行い、さらに、限られた用地において、できる限り多くのニーズに応えられるよう運動施設等の望ましい規模等を検討し、施設整備の要望を4項目に取りまとめたところでございます。
具体的には、野球場は、その規模として両翼を100メートル、センターを122メートルとし、収容人数は全体で8,000人程度、照明やスコアボードを有した施設が必要としました。
陸上競技場は、トラックの走路を直進周回ともに8レーンとし、椅子席は800席程度、照明を有した施設が必要としました。
バスケットボールコート及びバレーボールコートについては、一定数を体育館などの屋内施設とすること、また、コミュニティセンターについては、日米交流を目的として、和室や調理のできる設備等を備えた施設とすることが必要としたところでございます。
これらについて、昨年11月24日に、本市の意向として国に要望し、防衛大臣からは「市民にとって良いものができたと思われるように、努力してまいりたい」との発言が、また、防衛副大臣からは「市からの要望事項については、極めて重要な課題だと認識しており、今後とも、市と連携しながら、地元の意向に沿うよう最大限努力していく」旨の発言があり、私としましては、本市の意向に対して、国から特段の対応が図られるのであれば、了とするのもやむを得ないとしたところでございます。
今後も、運動施設等の具体的な内容につきましては、市民の皆様方に良いものができたと思っていただけるよう、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
長年の悲願であります民間空港再開につきましては、長年にわたる官民挙げた粘り強い運動がようやく実を結び、平成22年度から国土交通省による施設整備が始まり、平成24年度の開港に向けて大きく動き出しております。
一方、ターミナルビルの設置・運営を行う第3セクターである「岩国空港ビル株式会社」や山口県東部から広島県西部地域までの行政、経済団体など41団体からなる「岩国錦帯橋空港利用促進協議会」も設立され、地元の態勢も着々と整いつつあります。
今後は、愛称を「岩国錦帯橋空港」と決定された本空港の開港に向け、首都圏等を中心にPR活動などに積極的に取り組むとともに、市内外の皆様方に身近で親しみやすい空港となるよう、精一杯この名前を売り込んでまいりたいと考えております。
また、県と連携し、羽田発着枠や利便性の高い運行時間帯の確保に全力を尽くすとともに、空港が地域活性化の起爆剤となるよう、利用促進や活用方策について更なる検討を加えるなど、早期開港に向け努力してまいります。
岩国市の将来を担うこととなる子どもたちは、地域の「宝」であり、その子どもたちが心身とも健やかに成長することは、市民共通の願いでもあります。
そのためには、子どもを安心して産み育てるための環境を整えることが何より重要であり、子どもの成育過程に応じて、きめ細かな施策を講じていく必要があると考えております。
今日の厳しい経済情勢の中で、育てる側である保護者の方々の負担軽減をはじめ、子育てへの支援体制や施策の充実を図るとともに、子どもたちが安全に安心して過ごすことができるよう、児童福祉施設、教育施設の整備等にも引き続き取り組み、「岩国で子どもを産みたい、育てたい」と感じていただける環境づくりに努めてまいります。
地域の活性化への基盤づくりとしまして、本市の懸案事項でもあります物流・交流の基幹施設となる幹線道路の整備事業や岩国駅及び岩国駅周辺整備事業等を進めるとともに、岩国錦帯橋空港の開港を契機とした、企業誘致、新産業創出、雇用確保等についても、積極的に取り組んでまいります。
一方、市内には、過疎化や高齢化の進行により、地域社会としての機能維持が危ぶまれる地域もあり、こうした地域の方々が、住みなれた地域で生きがいをもって生活できるような支援策に取り組むとともに、地域住民への行政サービスの拠点施設となる総合支所の整備についても、早急に進めてまいります。
景気はやや持直し傾向にあるものの、市税の増収は見込めない状況の中、本市の財政状況は、社会保障関係費の自然増などにより、依然厳しい状況にあります。
このような中、本市では定員管理の適正化による職員数の削減、財政健全化計画に基づく地方債残高の縮減、赤字特別会計の早期健全化、土地開発公社の長期保有土地の解消など、将来負担の軽減により、財政基盤の強化に努めているところでございます。
一般会計の平成19年度末の地方債現在高は約764億円ありましたが、平成22年度末は、101億円減の約663億円に縮減できる見込みとなっております。
また、公共下水道事業特別会計の累積赤字につきましては、平成19年度末に約7億4千万円ありましたが、平成22年度末で解消できる見込みであり、市場事業特別会計の累積赤字につきましても、平成19年度末に約25億1千万円ありましたが、平成22年度末は、11億円減の約14億1千万円となる見込みでございます。
市民の皆様に安定した行政サービスを提供するため、財政健全化に努めながら、その一方で、多額の財源が必要となる愛宕山まちづくり事業などの重要施策についても、確実に実施していきたいと考えており、その両面から、財政基盤の強化や財源確保は不可欠であり、今後も財政の健全化に取り組んでまいります。
以上、六点について私の基本姿勢について述べさせていただきましたが、今後も岩国市の発展のために、「さらなる飛躍」を目指して全力で取り組み、市長としての責務を果たしてまいる所存でございます。
引き続き、議員各位をはじめ、市民の皆様の御支援と御協力をお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。