令和3年度の当初予算を始め、諸議案の審議に先立ち、施政方針について申し上げます。
この1年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るう中、本市においても、感染症防止対策に加え、生活や雇用を守るための経済対策などに力を注いだ1年でありました。
しかし、今なお、感染状況や地域経済の先行きの不透明さなどから、多くの方が御不安を抱えておられるものと考えています。このような時こそ、私自身が先頭に立ち、市民の皆様と一緒になって、この難局を乗り越えるとともに、これまでのまちづくりの流れを止めることなく、しっかりと取り組んでまいります。
それではまず、本市の重要課題について申し上げます。
新型コロナウイルス感染症への対応、とりわけワクチンの接種につきましては、市民の生命と健康を守り、市民生活や地域経済に与える影響を最小限とするため、山口県や関係機関と連携し、取り組んでまいります。
加えて、地域外来・検査センターの運営を継続するとともに、感染症の流行期に医療材料が不足することがないよう、計画的な備蓄に取り組んでまいります。
学校等の対応につきましては、文部科学省の「衛生管理マニュアル」に沿って、感染症の発生の有無にかかわらず、細心の注意を払いつつ、教育活動を実施してまいります。
仮に、児童生徒や教職員の中に感染者が発生した場合には、地域や学校内の感染状況等を総合的に勘案し、保健所等と協議の上、適切な範囲で臨時休業を実施します。学習保障やメンタルケアについては、これまでの取組に加え、各学校のICT環境を活用しながら、取り組んでまいります。
なお、放課後児童教室や保育園等につきましても、学校と同様の感染対策を講じ、適正な衛生管理を行った上での保育を実施してまいります。
また、教育・保育現場においても、感染が確認された児童生徒に対する誹謗中傷や偏見などは絶対に許されません。このことを徹底するとともに、感染が確認された児童生徒やその御家族をサポートしてまいります。
コロナ禍により、影響を受けた事業者に対する支援策につきましては、国の雇用調整助成金等に上乗せする「岩国市雇用安定補助金」や、売上げが減少した事業者に対する「岩国市新型コロナウイルス対策融資保証料補給補助金」を実施するなど、引き続き雇用の維持や事業の継続を支援してまいります。
さらに、地域経済の先行きが不透明な中、今後も、正確な情報収集や実態把握に努め、国や山口県の支援策の内容も踏まえながら、その状況に応じた効果的な施策を実施してまいります。
米軍岩国基地の対応につきましては、「米海兵隊岩国航空基地における新型コロナウイルス規則」に基づき、厳しい感染防止対策が実施されています。
また、岩国基地では、先月25日に、新型コロナウイルスのワクチンが到着し、翌26日から、接種が開始されています。
市としましては、今後とも、岩国基地や関係機関と相互に連携しながら、地域の感染拡大防止に取り組んでまいります。
次に、総合計画に掲げています、6つの基本目標とそれを支える行政経営について、主な取組を申し上げます。
子育て支援につきましては、安心して子供を産み育てることができるまちを目指し、子育て世代包括支援センター「ほっとI」において、妊娠・出産・子育てにわたる切れ目のない相談や支援を行うため、関係機関と連携し、全ての子供の命を守り、健やかな成長を見守る環境づくりに取り組みます。
また、子供や保護者に安心・安全な保育環境を提供するため、周東町のわかば保育園の建て替えを進めてまいります。
さらに、こども医療費助成制度などを継続するとともに、季節性インフルエンザに係るワクチン接種費用の助成の対象となる年齢を1歳から生後6か月に拡大します。
このほか、保護者の経済的負担を軽減するため、市立小・中学校の給食費無償化についても、引き続き、実施してまいります。
健康づくりにつきましては、市民一人ひとりが健康でその人らしく生活できる豊かな人生を目指して、食育の推進や生活習慣病の予防、こころの健康づくりに取り組んでまいります。
また、市民に普段から体を動かすことの重要性を理解していただき、身近に実践することができるよう、岩国弁によるラジオ体操の普及に努めるとともに、NHKの夏期巡回ラジオ体操の開催に取り組んでまいります。
このほか、歯と口腔の健康づくりに取り組むため、大人の歯科健診の対象年齢を拡大するとともに、健診内容の充実を図ります。
高齢者が安心して生活できる環境づくりにつきましては、運転免許証を所有していない75歳以上の高齢者を対象に、タクシーの利用券を交付する「高齢者活き行きサポート事業」を引き続き実施することで、高齢者の生活を支援しながら社会参加を促します。
また、市内の介護サービス事業所に就職した新卒の介護福祉士に給付金を支給することにより、若手人材の安定確保と質の高いサービスの提供などを目指してまいります。
このほか、引き続き、「地域包括ケアシステム」の深化・推進を図るため、市民組織や関係機関などと連携・協働し、高齢者が住み慣れた地域で安心していきいきと暮らすことができるよう、取り組んでまいります。
医療体制の堅持につきましては、山口県や医師会等の関係機関と連携を図り、医師等の確保や育成支援、地域の実情に応じた医療体制の構築等に取り組んでまいります。
また、中山間地域の中核病院の一つである市立美和病院の移転新築については、令和6年度の開設を目指して進めてまいります。
黒磯地区の岩国医療センター跡地につきましては、福祉・科学学習施設を核とし、ふれあい交流施設や自然交流施設、健康増進施設を配置した「いこいと学びの交流テラス」を整備します。
令和3年度から、建築物等の詳細設計と造成等の土木工事に着手することとしており、令和7年度末の完成を目指し、事業を進めてまいります。
観光振興の推進につきましては、錦帯橋を始め、その周辺を彩る桜や吉香公園のライトアップを行うなど、夜型観光の更なる魅力向上を図り、滞在時間の延長や宿泊客の増加につなげてまいります。
また、ポストコロナを見据え、市内各所の魅力や観光情報について、SNS等を通じて積極的に発信するほか、PR動画を活用した観光プロモーションを展開していくとともに、観光事業者と連携した新たな観光体験メニューの開発や観光資源の魅力向上に取り組み、観光誘客の回復につなげてまいります。
このほか、錦帯橋の美しい風景を代表する桜を全国に発信するとともに、市花である桜を、市民とともに次世代につなげることを目的として、「全国さくらシンポジウムin岩国」を令和4年3月に開催します。
また、観光交流や地域振興に資する飛行艇ミュージアム(仮称)の整備の実現に向け、国に要望を行うとともに、引き続き、官民一体となって機運の醸成に取り組んでまいります。
企業誘致の推進につきましては、今月1日にオープンした「しごと交流・創業支援施設Class Biz.」のシェアオフィススペースを活用し、コロナ禍において企業が求める働き方に対応したサテライトオフィスなどの誘致を進めてまいります。
また、空港の立地という本市の優位性をいかした航空関連産業や、令和3年度に運用開始が予定されている防衛装備庁艦艇装備研究所の岩国海洋環境試験評価サテライト(仮称)に関連する産業の誘致にも取り組んでまいります。
中心市街地の活性化につきましては、株式会社街づくり岩国を中心に商工会議所や不動産所有者、事業者などのまちづくり関係者と連携しながら「第2期岩国市中心市街地活性化基本計画」に掲載された事業を推進します。
なお、岩国駅東西のそれぞれの駅前広場に隣接する民間事業者による再開発事業についても、引き続き、官民が役割分担を踏まえながら連携し、事業の推進を図っていくとともに、岩国駅周辺のにぎわいの創出につながるよう、図書館機能を核とした施設の整備に向けて取り組んでまいります。
また、(仮称)山口県東部産業振興センターの整備につきましては、本施設がポストコロナの産業振興を担う拠点施設となるよう、引き続き、山口県に要望してまいります。
農林水産業の振興につきましては、本市の地域資源や特性をいかしながら、魅力的でやりがいのある持続可能な産業とするため、後継者や新規就業者の確保・育成を支援するとともに、施設整備に対する支援などについても、引き続き、実施してまいります。
また、林業の活性化や森林の持つ多面的機能の発揮を図るため、森林の適切な経営・管理の推進や、木材利用の促進などに取り組んでまいります。
シティプロモーションの推進につきましては、子育て世代をメインターゲットとして、本市の充実した子育て支援策や盛んな国際交流の状況などを効果的に発信することにより、魅力度や認知度の向上に取り組んでいます。
令和3年度からは、株式会社ANA総合研究所の社員1人を受け入れ、その知見をいかしたSNSによる情報発信などの取組を行うことで、本市のプロモーション活動の推進を図ります。
さらに、移住定住相談窓口においては、新たにオンライン相談の受付を開始しており、引き続き、株式会社街づくり岩国と連携しながら、移住・定住の促進を図ってまいります。
地域ブランドの推進につきましては、昨年10月から、本市の特産品を活用し開発した統一ブランド商品「つまんでちょんまげ」の本格販売を県内で開始しており、今後も、特産品の高付加価値化やプロモーション活動を行いながら県内や都市部での販路拡大に取り組み、ブランド力と認知度の向上を図ります。
幹線道路につきましては、都市間ネットワークの充実と渋滞緩和や災害への対応、空港や岩国医療センターなどへのアクセス向上の観点から、岩国大竹道路や藤生長野バイパスの早期完成と岩国西バイパスの早期実現に向け、官民一体となって、国や山口県に対し要望してまいります。
南岩国駅周辺整備につきましては、来月下旬の供用開始を目指して新駅舎の準備を進めています。引き続き、駅前広場の再整備と交差点改良を実施し、安全で快適に利用できる交通結節点となるよう、取り組んでまいります。
また、これらと併せ、長期未着手となっている「南岩国駅前地区土地区画整理事業」に代わるまちづくりについても、検討を進めてまいります。
市営住宅の整備につきましては、老朽化により更新時期を迎えた周東地区の市営住宅について、統合の中核となる沖原団地の建て替えを進めてまいります。
下水道の整備につきましては、計画的に各処理区の面整備を進めるとともに、川下地区及び岩国・錦見地区の汚水幹線を延伸して、未普及地域への整備にも取り組んでまいります。
愛宕山地区の多目的広場につきましては、屋根付広場や大型複合遊具のほか、災害に備えた飲料用耐震性貯水槽などを整備してまいりました。これにより、愛宕山まちづくり区域における工事が全て完了することとなり、来月27日には、養生中の芝生エリアを除き、「愛宕山ふくろう公園」として供用を開始します。
今後は、医療・防災交流拠点として、市民の安心・安全を担い、多くの子供たちを始め、市民の皆様に喜んで御利用いただけるよう、適切に維持管理してまいります。
防災対策の充実につきましては、迅速な避難情報の伝達のため、引き続き、防災行政無線の屋内受信機の整備に取り組んでまいります。
また、激甚化・頻発化が予想される自然災害に対応するため、国土強靭化地域計画を策定し、市民の安心・安全の確保に向け、防災・減災に取り組んでまいります。
浸水対策につきましては、排水路の改修を始め、ポンプ場や雨水調整池の整備を進めるとともに、河川においては、堆積土砂の撤去を実施し、浸水被害の軽減を図ってまいります。
あわせて、土砂災害の防止につきましては、急傾斜地崩壊対策を推進するとともに、山口県が指定した「土砂災害特別警戒区域」についての啓発活動に努めてまいります。
安心・安全対策につきましては、自治会が維持管理を行う防犯灯の電気料金の全額助成を継続するとともに、今年度に整備が完了する防犯カメラの適正な運用を図り、関係機関と連携しながら、犯罪や事故等の未然防止に努めてまいります。
このほかにも、米軍関係者を対象とした交通安全講習会を引き続き開催し、交通事故の防止に努めてまいります。
米軍岩国基地の安全対策として、まず、騒音対策につきましては、引き続き、地域の実情に即した対策を図ることができるよう取り組んでまいります。
このうち、防音工事の補助対象を事務所・店舗等にも拡大することについては、具体的な制度設計に向けた実態の確認等が行われるよう、国との協議を加速化してまいります。
また、米軍関係者による事件・事故等の防止については、実効性のある安心・安全対策の実施に万全を尽くすよう、今後とも、国や米側に求めてまいります。
なお、再編交付金については、令和3年度が最終交付年度となるため、今後とも、再編交付金の交付終了後も、施策の確実な実施を図ることができるよう、国に強力に要望してまいります。
地域と一体となった教育の推進につきましては、全小・中学校に設置されたコミュニティ・スクールを核とし、併せて中学校区ごとに構築された地域協育ネットの仕組みをいかして、家庭、学校、地域の連携を更に深め、協働することにより、子供たちの豊かな学びや育ちを支援してまいります。
また、これらを基盤とした小・中一貫教育を行うことにより、継続的で一貫性のある教育を推進し、児童生徒一人ひとりの個性を伸ばしてまいります。
教育環境の充実につきましては、「学校施設長寿命化計画」との整合性を図りながら、トイレの洋式化や施設の老朽化に伴う改修などを進めてまいります。
また、やましろ地域一帯の小・中学校の児童生徒に対して、給食を安定的に提供するため、美和西小学校に共同調理場を整備します。
このほか、今年度、児童生徒一人につき1台の端末を整備し、積極的な活用を図り、児童生徒が主体的・対話的に学習を深めていくことができるよう取り組んでまいります。
文化・芸術の振興につきましては、岩国市文化芸術振興財団と連携し、プランに基づく施策を推進することで、「文化芸術創造都市」の実現を目指してまいります。
また、岩国市民文化会館や吉香茶室等の活用を図り、市民が文化・芸術に気軽に触れ、多彩な活動を創造・発信できる環境づくりを進めてまいります。
文化財の保存・活用につきましては、錦帯橋の世界文化遺産登録に向けた取組において、世界遺産暫定一覧表に早期に記載されることを目指し、引き続き市民や関係団体と連携を図り、錦帯橋の価値を広く国内外に発信するとともに、文化庁に対し積極的な働き掛けを行ってまいります。
また、新たに策定する「名勝錦帯橋保存活用計画」に基づき、錦帯橋の保存活用に取り組んでまいります。
さらに現在、横山・岩国地区とその周辺の山々を範囲とした城下町地区について、国の「重要文化的景観」の選定を目指しており、美しい自然や歴史的な景観を保全し、伝統や文化を継承していくことができるよう取り組んでまいります。このほか、岩国徴古館や市内に点在する歴史民俗資料館等について、令和3年度に基本計画を策定し、これら施設の再編・再整備を進めてまいります。
スポーツ活動の推進につきましては、市民健康スポーツのつどいを始め、スポーツイベントへの参加促進を図るなど、生涯スポーツ社会の実現に取り組んでまいります。
延期となっている東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会についてですが、アメリカ合衆国のソフトボール女子とフェンシング男女のナショナルチームの事前合宿や、錦帯橋を渡る聖火リレーなどを通して、未来を担う子供たちがスポーツに対する夢や希望を抱くことができる契機となるよう、引き続き、機運醸成や啓発に取り組んでまいります。
また、愛宕スポーツコンプレックスにおいては、日米親善リレーマラソン等の日米交流イベントのほか、サッカー元日本代表選手が参加するドリーム・サッカーや高校野球公式試合など、各種イベントを開催するとともに、これらの施設などを活用したスポーツ合宿の誘致にも新たに取り組むことにより、交流人口の拡大を図ります。
県立武道館の整備につきましては、現在、山口県において基本計画の策定が行われており、本施設の早期建設に向け、スポーツ団体等と連携しながら、引き続き、山口県に要望してまいります。
国際交流事業の推進につきましては、日本語や日本文化を大切にしながらも、基地を地域資源として捉え、英語教育や国際交流が充実した「英語交流のまちIwakuni」の実現を目指し、取組を実施してまいります。
この取組の一つとして、国際交流拠点となる「(仮称)英語交流のまち推進センター」について、令和3年度末の完成に向け、整備を進めてまいります。
協働のまちづくりにつきましては、市民活動団体や自治会などの多様な主体が広範囲に連携し、それぞれの長所をいかした協働事業が推進されるよう、引き続き取り組んでまいります。
また、地域づくりを行う多様な担い手の育成を図り、併せて市民の主体的な取組を支援するなど、多様化する地域や社会の課題に柔軟に対応できるよう、市全体に協働の輪を広げてまいります。
中山間地域の振興につきましては、持続可能な地域づくりを目指し、引き続き、地域おこし協力隊などの外部人材を活用するとともに、新たに市が設置するオンラインによる移住定住相談窓口を活用するなど、田舎暮らし促進事業に取り組み、交流・関係人口の増加や移住・定住を促進してまいります。
行政経営改革の推進につきましては、市民満足度の向上と持続可能な行政経営の実現に向けて、効果的・効率的な行政経営に取り組んでまいります。
その中でも、国においてはデジタル庁の創設を始めとして、強力にデジタル化を推進しており、本市においても、マイナンバーカードを活用した電子申請サービスの導入や、RPA の対象事務の追加など、ICTの活用を進めていくことにより、市民の利便性の向上と業務の効率化を図ってまいります。
公共施設等マネジメントの推進につきましては、「公共施設の質と量の最適化」を推進するため、個別施設の具体的な対応方針の策定を進めてまいります。
財政運営につきましては、歳入では、市税において新型コロナウイルス感染症による影響が懸念されるほか、普通交付税が合併支援措置の終了により減額となる一方、歳出では、高齢化の進展などによる社会保障費のほか公共施設等の維持管理や更新経費などに多額の財源を要することなどから、今後も厳しい財政状況が続くものと見込まれます。
こうした状況においても、まちづくりに必要な施策を着実に実施していくため、財政計画に基づき、歳入の確保や歳出の合理化などに取り組み、財政基盤の強化に努めてまいります。
以上、令和3年度の重要課題や主な取組について申し上げました。
私たちの生活は、デジタル化の推進による未来技術の活用やウイズコロナ・ポストコロナ時代の新しい生活様式への移行など、現在、大きな変革の真っ只中に置かれています。このような社会の潮流の中、本市では、令和3年度から、第3次となる総合計画の策定に取り掛かり、これからの時代の変化を捉えた新たな岩国市を創造してまいります。
また一方では、今を見据え、本市の抱える様々な課題について、決断力とスピード感を持って取り組むことにより、目に見える形で結果をお示しすることができるよう、今後とも、全力で市政の運営に取り組んでまいります。
議員各位を始め市民の皆様には、御支援と御協力を賜りますようお願いを申し上げまして、私の施政方針とします。