村岡ユウさん その1 「錦帯橋」
はじめまして。
漫画家の村岡ユウと申します。
「私の岩国」への出演、大変光栄です。
よろしくお願いいたします。
私が発表してきた漫画作品は現実の世界を舞台にしたものが多く、そのほとんどに、自分が生まれ育った岩国での幼少期や青春期の経験と原風景が影響しています。
岩国で成長したからこそ、漫画家村岡ユウの今がある。そういう視点で、思い出の地を巡り、振り返っていければと思います。
まずはやはり錦帯橋です。

小学生の頃、川遊びは少し下流の臥竜橋付近でする事が多かったのですが、今、絵を描く仕事をしている点から振り返ると、錦帯橋付近で行われていた「写生大会」が大きな思い出です。
毎年の様に錦帯橋を描いて、何度か賞ももらった様な気がします。
錦帯橋はその構造ゆえの美しさがある一方、その複雑な構造ゆえ、細部まで描こうとするととても大変なのです(笑)。
特に橋の下側。複雑かつ整然と組み合わされた構造に泣かされた人は多いのではないでしょうか。
しかしだからこそ、絵にする際、完成図をイメージした上での描き込みの調整と省略、明暗のバランスをとる力などが自然と鍛えられた面もあるのではないかと思います。

子供の頃は錦帯橋それ自体の存在感にしか注目していなかったですが、故郷を離れ、改めて客観的に見ると、橋単体ではなく、後ろの山々、城、川と、「景色」全体の素晴らしさに気付かされます。
そういえば岩国高校1年生の時、放課後に学年全員で錦帯橋の強度検査に駆り出さ・・・協力させてもらった記憶があります。
物凄く暑い中、橋の端っこに寄ったり中央に移動したりと、みんなでぶつくさ言いながら頑張りました。
今も5年に一度やっているとの事。
こういう活動があってこそ、錦帯橋が美しく維持されているのですね!

そして花火大会。当時、付近の中学、高校生達は、花火大会が近づくと、誰を誘うとか、一緒に行く彼女が欲しいとか、ざわつきがちだったなと。
私にはロマンチックな思い出はありませんが、当時を思い出して、漫画でもそういうシーンを描きました。


思えば漫画家デビュー後に連載がとれずくすぶり続けていた時、岩国を訪れ、錦帯橋の河原で物思いにふけっている時に思いついた作品「馬鹿者のすべて」が初の連載作品にもなりました。
そういう意味でもやはり「錦帯橋」は私にとって特別な場所です。