はじめまして。野菜料理家の庄司いずみと申します。料理研究家ではなく、野菜料理家。野菜にこだわるそのわけは、岩国のおいしい野菜を食べて育ち、野菜が大好きだから。野菜を愛するあまり、ベジタリアンの料理に夢中になり、そのレシピを伝えることを仕事としているので、野菜料理家と名乗っています。
西岩国にある実家の家業は料理には縁がないし、子どもの頃は料理家という職業があることすら知りませんでしたが、小さな頃から台所にたつのが好きでした。そして何より、食いしん坊でもありました。
忘れられない岩国の味といえば、今はもうないお店、たしか椎尾神社の下あたりにあった大学いものお店。がらんとした店内で、大学いもを量り売りしてくれるのですが、それが甘くて甘くておいしくて!お小遣いをにぎりしめて買いに行き、お気に入りの場所に腰をおろして食べたものです。いつものあの場所。ひとりでぼんやり。心地よい風を受けながら食べる大学いもは、うちの中で食べるより百倍おいしいのです!
誰も知らない私のお気に入りの場所、実家のある西岩国界隈にいくつもあるのですが、まずはここ。椎尾神社です。
西岩国を見下ろす椎尾神社。長い階段をのぼるのですが、小学校の頃の私にとっては階段なんてなんのその。一番上までテクテクのぼり、階段に座るのです。大学いもなど、おやつのある時は、そのお気に入りの場所で食べるのです。
帰省するたび、特にお正月などは椎尾神社にお参りはしていましたが、いつも駆け足。今回のこの撮影のために、おやつこそ持ってなかったものの、本当に久しぶりにゆっくり腰をおろしました。暑い日でしたが木陰は涼しく、木が風に揺れる音の心地よいこと。そのままずーっと座っていられそう。実際に小学生の頃の私は、おやつを食べ終わったあとも1時間でも2時間でも。ほかの参拝客が訪れないかぎり、座っていたと思います。座って何を考えていたのだろうと不思議に思うほどですが、飽きることはありませんでした。
東京での毎日はせわしなく時間に追われる毎日ですが・・・・・・。木の香り、座った階段の石の感触、歩いた時の土の音。あの頃はあたりまえだったそのすべてがすばらしく、私はなんてすてきなところにいたのだろうと思います。
座るだけではなく、お参りもします。神様に無事を報告。いつもありがとうございます。
椎尾神社といえば!忘れてはならないのは、その裏手にあったすべり山。ご存知の方はいらっしゃるでしょうか。子供たちがすべって作った(?)山肌をえぐったようなコース、いわば天然のすべり台が並んだ、最高の遊び場です。急勾配のコースは小学校高学年の子達が滑り、ゆるやかな勾配のコースは低学年の子でも滑れます。知ってる子は多くなかったのか、遊んでいる子はまばらだったのですが、私は大好きでキャーキャー騒ぎながら滑り降りたものです。残念なことに今はなくなってしまったよう。小学校低学年のころもよく遊んでいましたが、中学校になってもまだその場所はお気に入りの遊び場でした。中学生くらいになると誰でも大人のマネをしたがりますが、それでも滑って騒いで遊んでいたのだから、なんと無邪気なことだったかと、懐かしく思います。