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【岩国高等学校プレクトラムアンサンブル部 末廣健児さんその5】

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年4月1日更新

最終回となる今回は、私が「マンドリンと出会った場所」、岩国高等学校をご紹介します。
岩国高等学校は、これまでの「私の岩国」の中でも何度か取り上げられていますので、今回は少し違った角度からお伝えしたいと思います。

高校のご厚意で、平日の日中に校舎の中に入らせていただきました。
校舎内を歩いていくと、すれ違う学生さんがみんな「こんにちは!」とあいさつをしてくださって、とても清々しい気持ちになりました。岩国の高校生、すごいですね。(高校生の頃の自分には、お恥ずかしながらそんなことはできていなかったような・・・)

高校に入学してクラブを選ぶときに、「音楽系のクラブに入ろう!」との思いを持っていました。当時、岩国高校にあった音楽系の部活動は吹奏楽部、合唱部、そしてプレクトラムアンサンブル部の3つ。合唱部には女子部員しかいなかったこともあって、楽器を演奏する2つの部のいずれかにしようと考え、「吹奏楽は小学校や中学校の頃からずっと続けている人も多いし、“プレクトラムアンサンブル”ってなんだか珍しそう」という単純な動機で、部室に足を運んでみました。そこではじめて「マンドリン」という楽器に出会うことになったわけです。

さて、このページをご覧になる方の中には「マンドリンって何?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、ごく簡単にご紹介させていただきます。
マンドリンはイタリア生まれの弦楽器で、弦が8本(2本1組で、太さの異なる4種類の弦)張られています。皆さんよくご存じのバイオリンは弓で弦を“擦る”ことで音が出ますが、マンドリンは弦を鼈甲やプラスチックでできたピックで“はじく”ことで音を出します。ちなみに、このピックのことをイギリス英語で“plectrum(プレクトラム)”ということから、「プレクトラムアンサンブル」という部活動の名称が生まれています。

バイオリンにビオラ・チェロ・コントラバスといった同属楽器があるように、マンドリンにもマンドラ・マンドロンチェロ・マンドローネという、大きさや音域の異なる同属楽器があります。これらマンドリン系の楽器に、クラシックギター・コントラバスを加えた編成が、一般的に「マンドリンオーケストラ」と呼ばれています。

今私が住んでいる京都や、大阪・奈良などの関西圏、あるいは関東圏の高校には、部活動としてのマンドリンクラブが比較的あちらこちらにあります。広島にも複数の高校にマンドリンクラブがありますが、山口県内の高校でみると非常に珍しい部活動であると思います。一方、全国の大学にはマンドリンクラブがあるところが結構多いです(ご興味のある方は、インターネットなどで調べてみてください!)。

今回は、ご無理を言って「部室」におじゃまさせていただきました。

音楽室に向かう渡り廊下
 
音楽室に向かう渡り廊下を進んでいくと・・・。

部室入り口のプレクトラムアンサンブル部の看板
 
ありました。部室入口の「プレクトラムアンサンブル部」の看板。もしかすると、私の在学中の頃のものがそのまま使われているかも・・・?
入口を入ると、右手に吹奏楽部の部室、左手にプレクトラムアンサンブル部の部室、というように、部屋の真ん中を棚で仕切って共有しています。これは、当時から変わっていませんでした。

プレクトラムアンサンブル部の部室内の様子
 
プレクトラムアンサンブル部、通称「プレアン」の部室の中です。昔と比べて床はきれいにはり替えられているようですが、棚などは昔のものが今も大切に使われていました。この場所で、譜面の準備をしたり、ああだこうだと皆でわいわい雑談をしたりしていたことを思い出しました。

プレクトラムアンサンブル部の部室内の楽器ケース

 楽器ケースが並んでいますね。自分がいた頃より、ずいぶん整頓されているように思います。マンドリンやギターは木を素材とした楽器なので、バイオリンなどと同様に長く演奏し続けることで響きがよくなったり音色の深みが増したりします。おそらく、ここに並んでいるクラブ所有の楽器たちも、先輩から代々受け継がれて音を奏で続けてきているはずで、これから先もそうあるのだろうと思います。

入部して私が選んだパートは、先にご紹介した中にありました「マンドロンチェロ」という楽器です。マンドリンより二回りサイズアップしてギターほどの大きさで、出る音も2オクターブ近く低い楽器になります。なぜこの楽器を選んだか、その理由もとても明快で、マンドリン系の楽器が自分にとって珍しかったのでやってみたいと思い、マンドリン系で選択できる3パート(マンドリン・マンドラ・マンドロンチェロ)の中で、その当時男子の先輩がいらっしゃるのがチェロパートだったから、というものでした。女子ばかりのパートに男子一人で入る勇気(?)もなかったですし、我ながらどれだけ単純なんだろうかと思います・・・。ただ、実際に楽器に触れてみるととても面白くて、また皆で合奏することも楽しくて、部活動にどんどんのめり込んでいきました。

末廣さんが練習していた中庭
 
こちらは、校舎の二つの棟の間にある「中庭」です。芝生が広がっている何の変哲もない庭ですが、私にとってはここが“思い出の屋外練習場”でした。当時の部活動では、音楽室は大きな打楽器などが必要になる吹奏楽部や、ピアノが必要になる合唱部が交代で使っておられましたので、プレアンはこの場所に楽器を各自持ってきて、パイプいすを並べて合奏練習を行ったり、コンクリートの渡り廊下に腰かけて個人練習をしたりしていたのです(今回高校でお話を伺ったところ、今は教室内で練習しておられるとのことでした)。屋外ではありますが三方が校舎に囲まれていますので、意外と音の反響はよかったりして、この場所で外の空気を感じながら楽器の練習に打ち込む、というのが、私の高校生活の中で大きなウェイトを占めていました。

その後、大学へ入学してからもマンドリンクラブに入り、卒業後は社会人団体に所属して楽器の演奏を続けてきました。大編成での合奏だけでなく、四重奏や小編成アンサンブルに参加してCDにしていただいたり、また徐々に編曲や作曲をする機会もいただくようになったりして、現在の音楽活動へとつながっています。あきれるほどシンプルな動機で選んだ楽器を25年以上続けてきたことによって、今では全国各地から音楽を通じた様々な“ご縁”をいただけるようになり、本当にありがたく思っています。前回少しご紹介させていただいた岩国マンドリンオーケストラとのご縁も、実は私が高校在学中に当時の「岩国市民マンドリンクラブ」の定期演奏会に2度賛助出演する機会をいただいていたことが、きっかけの一つになりました。その頃いろいろと教えていただいていたメンバーの方々が今も演奏活動を続けられていて、今年の定期演奏会を機に再びお会いして、大変感激しました。また、今回高校に伺った際に現役のプレアン部員の皆さんにもお目にかかることができ、ここでもまた“ご縁”を感じた次第です。これからも自分なりのペースで、少しでも皆さんに楽しんでいただける音楽を創っていければ、との思いを新たにすることができました。
連載の最後に、前々回に続いてもう一曲だけ拙作をご紹介させていただきたいと思います。私が現在所属する団体の演奏で、自身もマンドロンチェロ奏者として参加させていただいていますので、もしよろしければご覧ください。
「風のシンフォニア」(演奏:ARTE MANDOLINISTICA+ARTE TOKYO) <外部リンク>


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さて、5週にわたりましてお届けしてきました「私の岩国」、いかがでしたでしょうか。誰もが訪れることのできる観光スポットのような場所のご紹介は少なめでしたので大変恐縮なのですが、私なりに岩国の地で見て、聴いて、感じてきたことが、今の自分をつくり上げている・・・すなわち「岩国のまちに育てていただいた」との思いから、このような内容となりました。
改めて思うことは、ありきたりかもしれませんが、「岩国のまちは本当にいいところだ」、ということです。これからもずっとそうあり続けてほしいと、心から願っています。

長文にお付き合いいただき、どうもありがとうございました!

末廣 健児