【岩国高校大根坂 周防柳さんその3】
山口県立岩国高等学校。わが母校であります。校舎が丘の上にあるのです。坂の下の自転車置き場に自転車を駐めてから、十五分、二十分ほども、えっさ、ほいさ、ときつい上りを上るのです。大根坂といいます。なぜ大根坂かというと、三年間上り下りするとふくらはぎに筋肉がついて大根足になるからです。思春期の女子にとってはゆゆしきことですが、それはともかく、坂道を黙々と上り下りすることは、おのずと内省のようなものを促します。いま思えば、高校時代、あの登下校の時間の中で得たものは、もしかすると教室で得たことよりも多かったかもしれません。
とりわけ記憶に残っていることを、一つだけ。
あれは高校三年生の、大学受験も迫った冬のことでありました。風邪をひいたらしく、熱が急に三十八度くらいに上がって、早退することになりました。仲良しだったAさんというクラスメイトが心配して下駄箱のところまで見送ってくれました。
いまはどうだかわかりませんが、当時は受験戦争がきびしくて、先生方は鬼のようになって生徒のお尻を叩いていました。いきおい空気も殺伐としていて、それに対して私はかなり傷ついてもおりました。そうして熱でぼんやりする頭で坂道を下りはじめたら、自分がなにを目指しているのかさっぱりわからなくなって、なにをしなければならないのかもさっぱりわからなくなって、坂道を一歩、一歩、踏みしめるたびに、涙が、ほと、ほと、と落ちるのです。さっき下駄箱のところで手を振ってくれた心やさしい友の笑顔を思い出しながら、一歩、一歩、ほと、ほと、と泣きました。
そんな涙の思い出の大根坂であります。
岩国高校玄関。風邪の私はここでクラスメイトに見送ってもらったのです
岩国高校の教室。試験中で人気なし。学校の風景ってなんかきますね
大根坂。女生徒が二人下っていきます。夏目漱石も「山路を登りながら考えた」とおっしゃいました。by『草枕』