【岩国シロヘビの館 片塰満則さんその4】
今年の春、陽気に誘われて吉香公園を散歩していた折に、見慣れない建物を見つけました。それが、”岩国シロヘビの館”でした。
私が小学校に上がる前のこと、父が市内にあった(場所は良く憶えていないのですが)シロヘビの展示施設につれていってくれました。しかし薄暗い飼育場所で、物陰に隠れている蛇を私は見つけることができず、展示されていた図解をみて、その姿を始めて知りました。怖がりだった私はむしろ蛇に会わなかったことを安心した記憶があります。
この新しい施設は、当時の暗く怖かった場所とはまったく違う、明るく、そして落ち着いた雰囲気です。ここでは、大きなガラス張りの飼育ケースの中で、シロヘビもまた、くつろいでいるようで、のびのびとしたその姿を見せてくれます。
また、シロヘビについての、さまざまな科学知識の展示や、白蛇にまつわる岩国地方の昔話がアニメーションで紹介されています。 私が子供のころに見た施設とは隔世の感があり、今これを見ることができる子供たちが、うらやましく思えます。
私が目を見張ったのは、昔話のイラストが、私の大好きな漫画のひとつである「蟲師」の作者、漆原友紀さんによって描かれていたことでした。
私は、「蟲師」の第一話を雑誌で読んだときから、その絵や物語に強く惹かれました。”蟲”という存在を通して、世界の不思議や秘密、そして美しさを描いてゆくその作品は、かつて読んだことのない面白さに満ちていました。単行本1巻の挿絵から、「ひょっとして、岩国にゆかりのある方なのでは?」、と想像したり、また後に、岩国市のご出身だと知り、なにか答えあわせができたようで、「やっぱり!」と、喜んだりもしていました。
ミュージアムショップには、漆原さんのイラストを使った、クリアファイルが販売されています。勿論(?)私は5種類すべて(!)買い求めて帰路についたのでした。
私が現在働いているポリゴン・ピクチュアズというCG制作会社は、300人以上が働いています。国内だけでなく、アジア、インド、ヨーロッパからオーストラリアまで、世界各地から日本に来た仲間も多数います。月末の金曜日には社内のスペースで”ビア・オクロック”とよばれるパーティが開かれ、私も下手な英語で、彼らの故郷のことを尋ね、そしてまた岩国の事を話します。私が岩国を語るときの話題は、まず錦帯橋。それからシロヘビ、そして、日本酒、と続きます。白い蛇の話は、どこの国の人も皆、きわめて日本的で、そして神秘的だ、という感想をもらします。日本に興味をもっている彼らに、いつかこの場所にも来てもらいたい、と思います。