私が、市長に再選いたしまして、早くも1カ月が過ぎようとしております。
岩国市のみならず、日本、更には世界全体の社会経済情勢が激変している中、本市のかじ取りはますます難しくなると思われます。
私は、この壇上に立ち、改めて、責任の重さを痛感し、身が引き締まる思いとともに、岩国を「夢と希望と活力に満ちあふれるまち」に再生したいという強い決意を、ここに表明するものであります。
今、まさに、私に求められていることは、市民の皆様方のさまざまな御意見や考えをしっかりとまとめ、一定の結論を見い出しながら、こころを一つにし、夢を持って、岩国を発展させていくことであります。
そのために、私は、あらゆる困難にも、不撓不屈の精神で取り組み、乗り越えていく覚悟であります。
まず、本市の重要課題について申し上げます。
私は、この度の選挙を通して、市内全域を回り、多くの市民の皆様の声をお聴きし、生活に密着したさまざまな課題について、改めて認識したところでございます。それらの課題や本市が抱えている米軍再編などの重要課題に対し、私の基本的な考え方を申し上げます。
最初に、私の基地に対する基本的姿勢や考え方、また、米軍再編に対する基本的スタンスは従来から一貫しており、全く変わっていないことを申し上げておきたいと思います。
また、米軍再編問題に対しては、「これ以上の負担増は認められない」「普天間基地移設の見通しが立たないうちに、厚木基地の空母艦載機の移駐のみを切り離して進めることは認められない」という県・市の共通の基本スタンスで対処しているところであり、今後も、この基本スタンスを堅持してまいります。
また、「国は、この基本スタンスを尊重し、責任ある対応をすべきである」と考えております。
沖縄と同様、基地を抱える本市は、基地の運用に当たって、住民が安心して安全に暮らせる環境が確保される、いわゆる安心・安全対策や、住民福祉の向上及び地域の発展に資する地域振興策の確実な実施が必要です。
私は、これまでの4年間、市民の皆様が不安を抱えている騒音問題などについて国と協議を重ね、現実的な対応や対策を引き出してきたところであり、また、選挙でもその点が評価されたものと思っております。
今後も、引き続き、安心・安全対策、地域振興策について国と協議し、地域の実情に合った新たな制度や対策が構築できるよう努力してまいります。
その中でも、とりわけ騒音問題に関しましては、空母艦載機の試験飛行の速やかな実施、滑走路の運用時間の短縮、防音工事対象区域の拡充を強く要望し、実現を目指すとともに、日米地位協定の見直しと運用改善を関係自治体とも連携して国に粘り強く働きかけてまいりたいと考えております。
今後も、安心・安全に関する国との協議を通じて、市民の皆様の不安を一つ一つ払拭していくことに最大限の努力を傾注し、その上で、地域の負担と協力に見合うだけの財政的支援を得られるよう国と交渉し、本市の長期的な発展が築かれるよう、あらゆる努力をしてまいります。
なお、地元の経済、社会活動に大きく貢献し、地域住民の安心・安全を守る組織として市民の皆様も大きな期待を寄せている海上自衛隊の残留については、引き続き、早期に決定を行うよう国に求めてまいります。
岩国錦帯橋空港が開港されますと、高速道路、港湾、新幹線、都市間鉄道、都市内鉄道、バス等といった多様な交通機関が市内に存在するという、15万人規模の地方都市としては、全国的にも例を見ない特長を有することになります。しかしながら、現状では、そのネットワークを活用しきれていない、あるいはネットワークのつなぎが十分でない部分があり、その活用及びアクセス整備が課題となっております。
今後、岩国市全域における、公共交通ネットワークの構築に向けて、総括的な検討・調整を行ってまいります。
本市の高齢者人口は、ますます増加する中で、高齢化率は、5年後の平成29年には33パーセントに達し、市内の3人に1人が高齢者となる見込みになっております。
また、近年、核家族化などの家族形態の変化、地域の人間関係の希薄化などの社会状況の変化に伴い、高齢者の社会的孤立が大きな問題となっております。
こうした状況の中で「団塊の世代」といわれる方々が高齢期を迎えられます。その方々には、これまでに培った多くの知識や経験を十分にいかしていただき、これからも生涯現役として活躍され、地域に貢献、参画していただくことが必要となってまいります。
昨年1月に制定された市民憲章には、「広げたいもの それは 世代や地域を超えた人の和」とうたわれております。
今後は、地域ぐるみで、また、地域を超えて高齢者を支えていく社会づくりに、積極的に取り組み、高齢者が安心し、生きがいをもって生活できる岩国市の実現を目指してまいります。
私は、2期目を迎えるに当たり、岩国がこれまでの閉塞感から脱却し、活力ある岩国へと再生するために、市長として「新しいまちづくりの夢とビジョンを提示し、それに向かって行動していく」それこそが責任ある政治であると強く心に刻み、今後の市政運営を行ってまいりたいと思います。
平成23年は東日本大震災や紀伊半島を襲った台風など、さまざまな大規模災害が発生いたしました。
災害は、いつ、どんなかたちでやってくるかわからず、常に過去の教訓を忘れることなく、備えておかなければなりません。
防災の主体は市民自身であり、「自らの身は自らで守る」といった「自助」、お互いに助け合い支えあう「共助」の気持ちを育て、地域の災害対応力の向上を図ることが極めて重要となります。
また、行政は「公助」として、安心・安全で災害に強いまちづくりを進めるために、道路や河川の整備、医療・防災交流拠点整備などのハード事業を計画的に進めるとともに、迅速かつ的確に情報を提供する役目を担います。
今後、市民による「自助」の行動、地域による「共助」の活動への支援と、消防団や自衛隊、国、県、企業等の防災関係機関と連携を深めることで、防災体制のより一層の強化を図り、災害に強いまちづくりを進めてまいります。
本市の総合計画では、「豊かな心と生き抜く力を育む教育文化のまちづくり」を基本目標に定めております。
子どもたちを取り巻く環境が、目まぐるしく変化する中で、夢を描き、未来を切り拓いていく子どもたちには、他人を思いやる優しい心と、どんな困難をも乗り越えていく、たくましさが求められております。
こうした中、私は、これまで「子育てをするなら岩国市」と言われるような、魅力あるまちづくりに向けて、次代を担う子どもたちの健やかな成長や自立を促し、子育て家庭を支援するさまざまな施策を積極的に推進してまいりました。
今後も、その取り組みを充実したものとし「子育て家庭が夢を持って育てる幸せを実感できる環境づくり」「子どもたちが希望を持っていきいきと育つ環境づくり」に取り組み、子どもたちを地域の宝として育て見守る、子育て支援社会の形成を目指してまいります。
そのためにも、教育の基盤づくりが大切であり、教育力の向上や子どもたちが安心して学ぶことのできる教育環境の整備にも、全力で取り組んでまいります。
昨年は、ワールドカップ女子サッカーで優勝した「なでしこジャパン」の選手のように、一つの目標に向かってお互いが信じ合う強い「絆」に感動し、また、東日本大震災では、大切な家族や友人を失いながらも人々が助け合い、地域で支え合う姿や、救援、復興に駆けつける人々の姿を目の当たりにして、全ての国民が「絆」の大切さを改めて実感したのではないでしょうか。
これからは、市民、自治会、NPO、企業、行政等が「協働」し、「チーム岩国」として、「絆づくり」「生きがいづくり」「仲間づくり」「健康づくり」を推し進め、身近な地域の課題解決にも、力を合わせて取り組む、元気な地域を増やしていきたいと考えております。
合併後、山口県内で2番目という広大な面積を有する本市では、各地域において、多種多様な問題を抱えておりますが、市民の皆様の生の声をしっかりと受け止め、地域の方々と一緒になって、課題を一つ一つ解決し、安心して暮らせる地域づくりのために、スピード感を持って取り組んでまいります。
「高い山ほど裾野が広い」と言われますが、地域の文化力を更に高めるためには、文化の裾野を広げていかなければなりません。幸いにも、本市では、長年にわたって大切に受け継がれてきた地域の歴史、貴重な文化・伝統が存在し、地元の風土が多才な人材を育んでまいりました。
今後は、これらの優れた財産・資源を更に育てることで、文化のみならず、観光や地域の活力へと結び付けて「いわくにらしさ」を出したまちづくりに取り組んでまいります。
また、豊かな自然環境によって営まれてきた農林水産業の振興も、地域の活力づくりに欠かせません。
そのためにも、生産基盤の整備、市産市消の推進、有害鳥獣対策などを推し進めるとともに、地域づくりの原動力となる担い手の確保・育成、地元特産品のブランド化、郷土料理の伝承など、岩国の魅力を広く打ち出すことで、地域産業の活性化に取り組んでまいります。
更に、地域活性化のカギを握る「雇用」と「所得」を生み出す企業誘致や地域産業の創出につきましても、充実した優遇制度や陸・海・空の交通アクセス、豊かな自然等、恵まれた立地条件をセールスポイントとして、誘致活動を推進するとともに、私自らが、精力的にトップセールスを行ってまいります。
いよいよ、平成24年度に迫った岩国錦帯橋空港の開港は、私たち岩国市民に、産業や観光面などにおいて、多くの夢や希望を運んでくれます。
例えば、広島空港や山口宇部空港、萩石見空港と連携を密にし、各地の誇る地域資源を利用して、地域活性化を図る魅力的な広域観光ルートを創ることも可能になります。
また、多くの人々を迎え入れる岩国駅は、エレベーターの設置等バリアフリー化された新駅舎や東西自由通路の建設、周辺では岩国駅前広場の再整備等を進め、数年後には、交通交流の結節点として、また、賑わい機能の創出の場として大きく生まれ変わります。
更に、広域的な交流の促進や地域間の連携強化につながる岩国大竹道路の早期完成、岩国南バイパスの南伸など、幹線道路のネットワーク整備も関係機関と連携し、着実に推し進めなければなりません。
そして、愛宕山のまちづくりエリアにおいては、現在、地域医療の中核施設である岩国医療センターの建設が進められており、今後は、防災の拠点施設となる防災センターや多目的広場の整備を進めてまいります。
このような都市基盤の整備が進む姿を、目に見える形で示すことは、市民の皆様に「岩国が大きく変わるんだ」という期待と将来への希望を抱いていただけるものと考えます。
こうした機運を醸成することが、地域の活力を生み出す大きな力となることを信じ、岩国市の新たなまちづくりに取り組んでまいります。
以上、まちづくりの基本方針を申し上げましたが、夢の実現、また、質の高い安定した行政サービスを行っていくには、当然のことながら、財源確保に向けた行財政改革を推進していくことも必要不可欠であります。
これまで、財政健全化計画に基づき、職員数の削減、地方債残高の縮減など、将来負担の軽減に努め、着実に財政基盤の強化を図ってまいりましたが、平成28年度からは、普通交付税等に係る合併支援措置の段階的縮減が始まり、大幅に交付税が減額されることで、財政運営が大変厳しい状況になることが予想されます。
こうした状況を乗り切るため、職員と一丸となり、強い信念と、斬新な発想を持って、行財政運営に当たってまいりたいと考えております。
最後に、私の好きな言葉に、坂本竜馬の「世に生を得るは、事を成すにあり」という言葉があります。私も、この時代の岩国に生を受けたことを喜びとし、市長として、私の役割を必ず果たしてまいります。
これからも、判断すべきことは、先送りすることなく決断し、決断したことは情熱をもって実行していく、その覚悟と自信をもっております。
そして、常に「志」を高くもち、市民福祉の向上と、愛する岩国市の「さらなる飛躍」を目指してまいりますので、議員各位をはじめ、市民の皆様の御支援と御協力をお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。