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ここから始まった。「岩国中学校」 樋口明雄さんその1

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年4月1日更新

十代の終わりに故郷を離れて以来、四十年。最後に岩国を訪れたのは、父の十三回忌――錦帯橋の架け替え工事が行われていた二〇〇四年の冬でした。去年、牛野谷に残っていた土地を処分して、これで故郷とは縁が切れたはずだと思っていたのに――。
山岳小説や冒険小説ばかり書いてきた私が、今になってなぜか故郷の岩国を舞台にした小説を、それも二作も続けて出版することとなりました。自分の少年時代をモデルにした〈風に吹かれて〉(ハルキ文庫)と本格ハードボイルド小説〈ダークリバー〉(祥伝社文庫)。どちらも地元で話題となり、それが縁となって、こうして「私の岩国」の取材というお仕事をいただくことになったのですから、人生、何が起こるかわかりません。
故郷との絆が、今まで以上に深くなった。そんな気がします。
おかげでこのたび十四年ぶりに、また岩国の土を踏むことができました。感無量!

岩国中学校校舎

岩国中学校は私の母校。
〈風に吹かれて〉の作中では”西岩国中学”としていますが、まぎれもないこの学校がモデルです。自分が、将来、小説家になろうと思ったのは、中学一年生のときでした。
折しも早川書房がSF文庫を出し、石森(石ノ森)章太郎、永井豪、松本零士といったマンガ家たちが次々と作品を放ち、世はまさにエンターテインメントの創生期といった時代。周囲には、そんなヒット作家になりたいと将来を夢見た級友たちがいました。
放課後になるとみんなで教室に居残りして、大学ノートなどに黙々と小説を書き、漫画を描いていたものです。
当時の校舎が、まだ現役で使われていたのにはびっくり。さすがに増築と耐震工事はされていましたが、あの頃、私たちが使っていたタイル貼りの手洗い場がまだありました。本当に久しぶりに招かれた校長室。「ここに入ったのは、ひどい悪戯をやって、当時の貴船校長にぶち叱られて以来です」っていったら、校長先生が大笑いされてました。
本当に悪ガキだったんです。

中学生

試験中だというのに、在校の中学生二名が校長室まで挨拶にきてくれました。
ふたりとも手足がすらりと伸びて小顔なところはいかにも現代っ子なんですが、その表情のどこか木訥なところに妙に懐かしいものを感じて、思わずこういいました。
「まさに”岩国の子”って顔してるなあ」
校長先生はまた大受けでした。
そんなふたりの生徒さんたちが、四十五年も前の卒業生――すなわち私の言葉に耳を傾け、熱心な様子で目を輝かしている姿がとっても印象的でした。

図書室展示

図書室には拙著のコーナーが作ってあり、色紙も書いて置かせていただきました。
みんなで読んでくれると嬉しいね!

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