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【由宇中学校 相馬芳枝さんその2】

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年4月1日更新
 由宇中学校は、JR由宇駅から約1kmの町はずれにある由宇町で唯一の中学校である。卒業生の有名人には、広中平祐博士(数学者、フィールズ賞受賞者、元山口大学学長)がおられる。
 中学校へは、由宇川沿いに約1時間の道を歩いて通った。二宮金次郎のように、歩きながら本を読んでいたが、交通事故に会うことはなかった。だって、車はめったに通らず、バスも1日4往復しかなかった時代だから。家に帰れば農作業が待っているから、自由に使える時間は往復の道だけだったのである。農村の良い子の基準は、農作業や家の手伝いをすることで、勉強することではなかった。学校では、私はおとなしくて目立たない生徒であった。
 自分で言うのはおかしいが、学校の成績はよかった。特に、数学や理科は得意で、満点に近かった。特に自然との関わりが深い生物は楽しかった。小中学校で読んだ伝記の中で、野口英世博士やナイチンゲールの物語に感動し、お医者さんや白衣の天使に憧れるようになった。そして、医学部を受験したが失敗して、化学者への道を歩むことになった。
成功の条件として、「運、根、鈍」が大事だと言われることがある。根と鈍は、由宇町で育ったことで身についたのかも知れない。子供のころは、貧乏な環境に生まれた不遇を嘆いていたが、人生の後半で運は開けた。44才で猿橋賞をいただいた頃から目立たない子は積極的な子に変身していき、やがて、研究リーダー、男女共同参画のリーダーとして働くようになった。69才で、世界女性化学賞をいただいたことには、我ながら驚いた。現在は、まだ少ない女性科学者を増やす活動や小中学生の理科の啓発活動に関わっている。
小中学生の頃に、教育や読書を通して将来、何になりたいかという夢が育っていく。この頃に、科学に興味を持つ学生が増えるように、理科の啓発イベントを行うことが大事であろう。私が住んでいる大阪府茨木市では、小中学生の夏休みの自由研究を対象に、2014年から茨木市相馬芳枝科学賞を実施している。女子は理科が苦手だと思っている人がいるようだが、2016年の12人の受賞者の内、女子生徒が8人いたことには我ながら驚いた。
中学校の同窓会は楽しく、欠かさず出席している。他に気心の知れたグループで小旅行をしたり、ピアノを聞かせてもらったり、中学時代の友達との交流は楽しい。
由宇中学校
由宇中学校
茨木市相馬芳枝科学賞授賞式
茨木市相馬芳枝科学賞授賞式(2016)
相馬さん著書「理科はこんなに面白い」
「理科はこんなに面白い」
相馬芳枝著(東京図書出版)