くすのき・樟・楠　澄川喜一さんその2

錦川は城山を迂回し、錦帯橋をくぐり抜け川下に至るころから川巾が広くなる。樟（くすのき）の巨木が寄り添いながらにょきにょきと群生している中州がある。

大木を写生しようと尋ねた。岩工生のころである。不思議な気配のする場所で何処かに神が宿っているような霊気があった。

久しぶりに中州を尋ねた。太い枝が天空を支えるようにまがりくねって伸びている見事な巨木に再会した。

昭和27年東京藝術大彫刻科に入学し、木彫をはじめた。樟を鋸で切り、ノミで彫った。樟の香りが強い香木だった。かつて和服を保存する箪笥は総て樟で作られていた。防虫効果があると云う。飛鳥時代の一木造りの仏像の素晴らしい名品は樟材で彫刻されている。

錦川の中州にある樟の群生地から私はパワーをいただいた。大切にしたいと思う。

(樟 くすのき科 常緑 樹液は樟脳)